御正体山タイトル3190m 百名山 2012年8月1-3日

「日本一の山旅。何度でも行きたい」

ずうっと槍/穂高に登るチャンスを待っていた。会社の夏休みはお盆を挟んだ一週間になるのが通常である。この時期だと山小屋はダダ混みになるに違いない。できれば、この時期を外した盛夏、平日に訪れたいと思っていた。東日本大震災以降、会社の夏休みが変則になった。今年は7/28〜8/5。この真ん中の平日を狙って、奥穂高を目指した。去年の槍ヶ岳-笠ヶ岳の縦走に続く上高地出発の山旅になった。
狙い通り、ダダ混みだけは避ける事が出来た。天気も、最上のタイミングになった。
初めての穂高と言うこともあり、一番ノーマルなルートを選んだ。今回のコースの弱点は、アプローチが長い事。上高地-明神-徳沢-横尾と延々3時間、平坦な林道歩きとなる。距離にして10km弱。山手線外回りで東京-五反田に相当する。
これを往復するのを避けるため、帰りは涸沢から徳沢にショートカットできるパノラマコースを考えていた。現地で聞くと、残雪のため未だ通行止めとの事。止む無く往復ほぼ同じコースになった。
ザイテングラートから見た前穂高と涸沢カール
ザイテングラートから見た前穂高と涸沢カール
黒岳山頂
黒岳傍の展望台から見た河口湖と富士
行程
一日目
上高地バスターミナル 12:35
明神 13:45
徳沢 14:55
横尾山荘着 15:55
二日目
横尾山荘発 6:00
本谷橋 7:10
涸沢ヒュッテ着 9:35
涸沢ヒュッテ発 10:30
ザイテングラート下 12:30
穂高岳山荘着 14:45
三日目
穂高岳山荘発 6:25
奥穂高山頂着 7:15
奥穂高山頂発 8:00
穂高山荘 8:50
ザイテングラート下 10:50
涸沢ヒュッテ着 12:10
涸沢ヒュッテ発 12:50
本谷橋 14:25
横尾山荘 15:20
上高地バスターミナル 18:20

難易度 ★★★★
行程時間(含む休憩) 一日目:3時間20分
二日目:8時間45分
三日目:11時間50分
駐車スペース 沢渡
トイレ 各山荘
登山口 わかりやすい
帰りの温泉
多数
お勧め度 ★★★★★

<ちょっとウンチク>
ザイテングラート。涸沢からの後半の登りをそう呼ぶ。どういう意味か調べてみた。ドイツ語でSeitengrat。Seitenがside(支/側)で、Gratがridge(峰)。すなわち支稜の意味。因みに主稜はHauptgrat。
昔、日本では登山はインテリの高貴な趣味だったようで、ドイツ語やフランス語が山用語には多い。
ジャンダルムはgendarmで憲兵/前衛峰の意味でフランス語。コルはcolで山の鞍部の意味でフランス語。カールはKarでドイツ語。日本語の方が難しく圏谷(けんこく)という。
キレットも外来語では?と調べたが、これは切戸で日本語のようだ。
さて、当のザイテングラートだが、支稜とも言えないほど、周りより少しだけ高い尾根だった。誰かが「ゴジラの背中」と言っていたが、涸沢から見た様子はそのイメージピッタリ。

<所感>
「梅雨明け10日」最も天気の安定している時期に、憧れの山旅に行った。混雑を避けるために水木金の3日のプランにしたが、これが正解だった。金曜も泊まりになれば、ダダ混みの山小屋になったみたいだ。復路は前穂高-岳沢経由のショートカットも考えた。決して安全なコースではない。二日目の夜、何度もカミさんが滑落する夢を見て、諦めた。

   河童橋と焼岳

6:50に家を出て、中央高速経由、沢渡に着いたのは11:40。バスに乗り換え上高地に着いたのは12:30.去年、槍ヶ岳に登った時とほぼ同じスケジュールになった。ちょっと歩いて河童橋の前で焼岳を眺めながら昼食を摂る。

   横尾までの林道

河童橋からは長い林道歩き。コースタイムでは横尾まで3時間10分になっているが、休み込みで3時間弱という感覚。横尾に着いたのは16:00前だった。今日はここまで。
今日は水曜日。横尾山荘は、狙い通り、それほど混んではいなかった。とは言っても一人一つの布団がやっと確保できているというレベル。

   横尾から前穂高を望む

横尾山荘では風呂に入れる。入浴後、外で地図を眺めながらビールを飲んでいると、何人かが「あのギザギザの山は何ですか?」と聞いて来る。自分も自信がない。後で調べたら前穂高だった。

  涸沢ヒュッテ手前の雪道

二日目は6:00に出立。本谷橋まではほとんどフラットな道。上高地から歩程で4時間。ここからようやくまともな登りになる。
涸沢ヒュッテの手前で雪渓の登りになる。ヒュッテから多くの人が出て、雪道に階段を作っていた。

   涸沢ヒュッテから見た涸沢カール

涸沢。そこには別世界があった。U字に削られた谷々、底には万年雪。谷の上には鋭い岩峰。その上は真っ白い雲と真っ青な空。ここは日本ではない。

  涸沢ヒュッテから見た穂高山荘方向

稜線に小さく今日の目標、穂高岳山荘が見える。思わず1時間近く長居してしまった。

  コイワカガミとアオノツガザクラ

ヒュッテから涸沢山荘経由で、山頂に向かう。足元には高山植物。チングルマ/アオノツガザクラ/コイワカガミ。ナナカマドは白い花を咲かせている。

   ナナカマドと涸沢ヒュッテ


眼下で涸沢ヒュッテが少しずつ小さくなっていく.
突然、ガラガラという音が聞こえてきた、地震かと思うような轟音だった。1kmほど先。ザイテングラートの手前の雪渓付近で崩落が起こっていた。「もし、あの下にいたら...」

   ザイテングラート

ザイテングラートは上の画像のように周りよりちょっぴり高い丘のようなところだった。前もっての情報で危険な場所とイメージしていたが、行ってみれば同程度の危険箇所は他でもあると感じた。

  ハクサンイチゲとシナノキンバイのお花畑

上の画像は雪渓の脇に咲くシナノキンバイとハクサンイチゲ。

  ミヤマダイコンソウと前穂高

ミヤマダイコンソウの向こうは涸沢カールと前穂高。

   もうすぐ穂高山荘

穂高岳山荘に着いたのは15:00前だった。天気も崩れてきたので山頂へは翌日に行くことにした。

 ザイテングラートの登り 穂高岳山荘と目前のピーク 穂高岳山荘を直下に見下ろす

  穂高岳山荘からの御来光(常念の直ぐ右横から昇る)

二日目も晴天。5:00に日の出。常念岳の直ぐ右から日が登る。少し遅めの6:30前に出立。

  笠ヶ岳


小屋の前にハシゴ2つを使った急登がある。が、そこを越えれば普通の登山道。笠ヶ岳が見える。

  ジャンダルム

50分で山頂に。さの先にはジャンダルム。まるで墓石のようだ。

 山頂の様子
山頂は2つのピークがあり、片方に小さなお社、もう一方に方位盤が備え付けられている。
山頂からの眺め(槍ヶ岳方面)

  南側の眺め(上高地は箱庭のよう)

展望は申し分ない。南は手前の焼岳から乗鞍、御岳、遠く、中央アルプスから恵那山まで。眼下の上高地は箱庭のようだ。北、手前から涸沢岳、北穂高、その向こうに槍ヶ岳。槍の左右に立山と白馬/鹿島槍。他にも上げればきりがない。間違いなく日本最高クラスの山望である。
南アルプスの左に富士山も見えている。雲の上に頭を出すというよりは雲の中にまぎれて台形のシルエットが見える。
いつまでもく山頂に居たかったが、今日中に上高地まで下りる事を考えるとあんまりのんびりも出来ない。45分で、山頂を後にする。
下りは、上りと同じコースを下りる。ザイテングラートの下で雪渓を横断するパノラマコース(涸沢ヒュッテより上)に入った。このコースを選ぶ人はあまり多くない。今夏は通行可能になったばかりで浮石が多いと聞いていたが、それほど危険な箇所はなさそうだった。

途中、雪渓の上に岩が転がっているのを見る。雪の上に岩があるわけはなく、崩れて落ちてきたものである。

  お花畑と涸沢ヒュッテ

涸沢ヒュッテからは完全に行き来た道を下ることになる。
何組も団体と行き交う。今日は金曜日。今晩の山小屋は何処も物凄い混雑になりそうだ。

   雪上の岩

上高地に着いたのは18:20。沢度方面最終バスは18:45発。あまり余裕はなかった。