2840m 百名山 登山日:2009年8月11日
2924m 百名山 登山日:2009年8月12日
「北アルプス最深部の山旅」
自分の持っているガイドブックによると百名山の中で登山口から最も時間のかかる山は水晶岳。2位が鷲羽岳。黒部五郎岳が9位になっている。ただ、黒部五郎岳は飛越トンネルからのアプローチで計算しての事。一般的な折立、新穂高温泉からで考えると、最も遠い山は黒部五郎岳になるのでは? いずれにしろ、今回の2座は日本有数の遠い山である事には間違いない。北アルプス最深部への山旅である。 前日に新穂高温泉にゆっくり泊まって、北アルプスに入った。 |
黒部五郎岳 |
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行程
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前日、新穂高温泉の穂高荘山のホテルに泊まる。川沿いに大きな露天風呂を持つ。食事はフランス料理にした。温泉旅館の山のような分量に辟易している人にはお勧めかもしれない。ゆっくり温泉を満喫して、翌朝遅く登山口に向かう。 しばらくは林道歩き。林道に強いなまけものハイカーカミさんが快調に歩を進める。1時間半弱でわさび平小屋。 わさび平小屋は風呂もある小屋。遠くから来た人はここを1泊目にする場合も多いようだ。 |
わさび平から30分ほどで、林道が消え、緩やかなガレ場の登りになる。さらに1時間で、秩父沢出合。この沢で昼食。 見ると100mほど上流に雪渓があり、そこから靄が立っている。沢の水は恐ろしく冷たい。当たり前だ、ついそこの雪が溶けた水だから。 天気が思わしくない。30分強で昼食を済ませる。 |
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沢からはやや急登になる。高度を稼ぐにつれ、後ろに茶色く丸い焼岳が見えるようになる。その右には乗鞍岳も見える。 1時間45分でシシウド平に着く。シシウドがあるはずだが、どういう訳かあの立派な冠のような花は見当たらない。 ここで道が大きく右に折れ、1時間強で鏡平小屋。 |
鏡平小屋は小さな池の傍にある。この池からの槍ヶ岳、穂高岳が美しいらしい。池に逆さに移る「逆さ槍」が有名。だが、今日は槍に雲がかかり、綺麗な写真は撮れない。 小屋は昨年増築したばかりで綺麗だ。最新の小屋らしく、機能的な造りになっている。まだ木の匂いのする部屋で一日目の眠りに着く。 |
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翌朝は雨。台風の影響だ。雨のピークは今夕と読んで、鏡平小屋に滞留のつもりでいた。何組かのパーティが手持ち無沙汰に、食堂でたむろしている。 でも雨は降っているものの現在のところ、嵐というレベルではない。双六小屋から降りてくる人も結構見る。小屋の主に双六小屋までは厳しい場所はないと聞いたので、少し遅く小屋を出る。 |
宿からしばらくはややきつい登り。雨具の防水があまり効いてないのか、パンツまでびっしょりになる。1時間10分で北アルプスの尾根に取り付く。 緩やかな尾根道をアップダウンしているうちに雨が小ぶりになってきた。双六小屋に着いた12時前には、風は強いものの、雨はほぼ止んでいた。 |
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そのまま、三俣小屋まで行く手もあったが、風が強かったので、2日目は手堅くここまでにした。北アルプスは小屋が多く、柔軟に予定変更が可能だ。元々、スケジュールは余裕を持って考えているので、数時間くらいの遅れは、リカバリ可能だ。だが、この判断は、あとあと禍根を招く。 天候は回復に向かう。夕方には、時折青空が見えるようになっていた。 |
双六小屋の正面には鷲羽岳が見える。横には裏銀座の野口五郎岳から表銀座の燕岳まで見える。180℃反対を見ると緩やかな谷の向こうに笠ヶ岳の三角の岩峰が...。 小屋はやや古いが、悪くはない。何より食事が良かった。カレーだけの小屋もあるのに、この界隈は総じて食事が豪華だ。名物の天ぷらを満喫。 |
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翌朝は晴天だった。眼下に雲海が見える。ただ、その雲の高度が高いので、天気は長続きしない筈。6:00に小屋を出る。 昨日の遅れを取り戻すため三俣蓮華まで巻き道を辿る。眺望は駄目だが、花は凄かった。コバイケイソウの大群生地、チングルマ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲ、コイワカガミ、ヨツバシオガマ、シラネニンジン、ハクサンボウフウ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマキンバイ、ハクサンフウロウ、.ミヤマアキノキリンソウ、ハクサンチドリ.....知っている高山植物がみんな咲いているのでは?と思うほどだった。花の写真を撮っているうちにどんどん時間が経ってしまう。 |
後半は軽い登りになる。この辺りから、なまけものハイカーカミサンの歩くペースが極端に落ちてくる。山に入って3日目。薄い空気を吸いすぎて。疲労が溜まってきたのかもしれない。なまけものハイカー、頭ではわかっているが、ついついイライラして当ってしまう。三俣蓮華岳に着いた時には9時前になっていた。 空は青いが、雲が上がってきてしまい、周りの山は見えなかった。上の写真はちょっと珍しい、長野、富山、岐阜、三県境の道標。三俣蓮華の三俣は、三県境を意味するのか? |
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ここから、黒部五郎小舎まで標高差500mを下る。下りた分は結局登らなくてはいけないので、500mは凄く損した感じだ。最初は軽いアップダウンを繰り返しながらの下り。下りが得意ななまけものハイカーカミサンの元気が戻ってきた。最後に一気に200mほど下って、今日の宿、黒部五郎小舎に着く。 |
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昼食を摂り、荷を預けて、軽装で黒部五郎岳に向かう。ピストンでここまで戻ってくる予定。 黒部五郎までは尾根沿いを進むコースと五郎カールの底を詰めて壁面を登るコースがある。時間的に短くなる後者を選ぶ。 30分ほど林間コースを歩くと、やがて石がゴロゴロした緩やかな斜面の野原に出る。五郎カールだった。直ぐ近くに壁面を登る道が見えるが、なかなか辿りつかない。 山での距離感は結構難しい。 |
ようやく壁に取り付き、急な斜面を登りきったら、20分で山頂に着く。 山頂に着いたのは14:30過ぎ。既に見晴らしは効かない。眼下に今登って来たカールが見えるだけだった。それにしても大きなU字谷だ。まあ、この谷を見ただけでも良しとしよう。 15分ほどゆっくりして、黒部五郎小舎まで戻る。 小屋に着いたのはちょうど17:00。夕食が始まっていた。 |
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4日目は、5:45に出発。まずは三俣小屋に向かう。最初は昨日下りた標高差200mの登り。登りきると、なかなかの眺望が広がっていた。南から笠ヶ岳、白山、黒部五郎岳、薬師岳までが見えている。もう少し登ると、薬師岳の右に立山、剣、赤牛、水晶まで見えた。 |
小屋から2時間で、三俣山荘に向かう巻き道に入る。この道はあまり通る人はいないようだ。抜かす人もいなければ、向こうから来る人もいない。 |
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三俣蓮華の北を巻く。 途中で八重咲きのミヤマキンポウゲを見つけた。珍種かと思い、写真を撮ったが、後で聞くとキンポウゲ科の花はよく八重に変異するらしい。 一時間ほどで鞍部を越えて南斜面に入ると、少し大きな雪田があった。この歳になっても、雪の上を歩くのは快感。かかとで雪をしっかり掴みながら、100mほど雪の斜面を下る。 |
その先で、鳩が鳴くようなホーホーという声が聞こえた。「何かいる!」 傍らに雷鳥の親子が散歩していた。七羽の雛が見え隠れする。親鳥が少し高いところに立って、子供を監視していた。我々人間を見ても逃げようとしない。「あいつらは安全だからね。」と、お母さんが子供たちに教えているのかもしれない。実に8年ぶりに出会った雷鳥だった。 |
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三俣山荘に着いたのは9:00。今回2度目のピストン。ここに荷物を置いて、鷲羽岳に向かう事にする。空は青く、雲はない。下の方の雲も低いので、鷲羽岳山頂では、最高の眺望が楽しめそうだ。 |
槍ヶ岳が、ハイマツ越しに見える。そのハイマツの上に布団が干してあった。雨具も必要なさそうなので、ここに置いて行った。 |
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ところが、1時間もすると雲が上がってきて、空を覆ってしまった。はっきり見えていた槍の穂先も全く見えなくなってしまった。山頂に着いた時には、景色どころか、霧雨が頭をぬらす。雨具を置いてきた事まで裏目に出るとは...。 鷲羽の山頂は最高の槍ヶ岳ビュースポット。手前に鷲羽池。赤茶けた硫黄尾根、ゴツゴツした北鎌尾根を挟んで槍の穂先が見えるところだ。北鎌尾根の左には富士まで見える。 楽しみにしていたこの景色も、一番手前の鷲羽池も時折霞む状態。悔しいから9年前に撮った左の写真を見てください。 霧雨の中、昼食のインスタントラーメンを食べて、行き来た道を三俣山荘まで下る。 三俣山荘に着いた時には13:00になっていた。再び荷物を背負って双六小屋に向かう。 三俣峠までは登り。この辺りから今日もなまけものハイカーカミサンの足が極端に遅くなる。どうも、カミサンは薄い空気に弱いようだ。 峠からはカミサンの体力を考えて、行き来た巻き道で双六山荘に向かう。景色は楽しめないが花いっぱいの道。休みを多く取り、双六山荘に着いたのは17:00だった。 カミサンの体力ギリギリだった。個室をとって、ゆっくり休むことにする。 |
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最終日5日目は、双六山荘から新穂高温泉までの下り。朝から雨だった、まあ下るだけだからいいか。 弓折岳の分岐までは軽いアップダウンの道。ここで北アルプスとお別れ。「北アルプス。楽しい山旅をありがとう」 鏡平-シシウドヶ原-秩父沢出合と雨の中を下りる。登ってくる人も結構いる。ずぶ濡れになりながら...。「明日は晴れですよ。頑張ってください。」と声を掛ける。 わさび平小屋に着いたのは、11:30。昼飯にカレーを注文。「旨い!」平凡なカレーがこんなに旨いとは! さらに1時間で新穂高温泉に着く。行きに泊まった穂高荘山のホテルで、温泉に浸かり、垢を落として、帰路に着く。 |
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今回は反省することが結構ある。 当初、鷲羽岳/黒部五郎岳共に朝一で登る計画だった。台風で3時間ほど予定がずれたため、両山の山頂に立ったのは昼近くから昼過ぎにかけて。おかげで360度の眺望は一度も楽しめなかった。やはり山は朝8:00までに頂に立たなくてはいけない。 |
なまけものハイカーカミサンは空気の薄い所は苦手のようだ。訓練しだいでどうにかなるかと思って、長い縦走を試したが、どうもムリのようだ。高い山に登る時は、充分余裕を持って計画を立てよう。一日の歩程で、ガイドマップの時間で5時間が目安か。 雨具の防水がほとんど効かなかった。もう一度、防水をしなおそう。 |