2038m 百名山 登山日:2009年9月20日
「変化に富んだ最高の山旅」
盛岡市街と岩手山頂の高度差は1900m近い。これだけの高度差を持った山が、人口30万人クラスの市街の直ぐ近くにあるところはそうはない。 しかも、南部富士と言うように、その山容は非常に優美だ。 石川啄木が詠った「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」という気持ちも良くわかる。 東北の山というので、それほど難しい山でないだろうと少々舐めて日帰りで登って下りてくるように宿をとってしまった。ところが調べていくと、意外に大変そうだ。登山口から山頂までの標高差はどこから登っても1400-1500m前後。これは南北アルプスの山々に匹敵する。体力のない「なまけものハイカー夫婦」だと、普通なら一泊の標高差だ。 覚悟を決めて、最も高度差の小さい馬返しからの往復のコースを選んだ。 |
北東側から見た岩手山 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
行程
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前日、盛岡市内のシティホテルに泊まる。朝4:00に起床。駅前でレンタカーを借りて、馬返しに向かう。最近のレンタカー屋は24時間営業している。これは朝早く車が必要なハイカーには便利なサービスだ。しかも車にはカーナビが標準装備。見も知らぬ土地で簡単に登山口までたどり着くことが出来た。 馬返しには5:30に到着。100台は停まれそうな大きな駐車場がある。早朝と言うのに、その駐車場がほぼいっぱいになっていた。 |
車の中には、軍用車が混じっている。どうも陸上自衛隊が訓練の一環で、岩手登山をするようだ。規模は20名程度。後で調べると1個班が10名程度というので、2個班という事になる。 今回はこの自衛隊員と前後しながらの登山になった。 身支度を整えて5:50に出発。 登り出して直ぐに、「クマには注意してください」という立て札に出会う。「クマ以外は注意しなくていいのか」と思わずツッコミを入れたくなるが、まあそこはご愛嬌。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
30分で0.5合目に着く。ここは0.5合目毎に道標がある。こんなに細かく区切っているところは珍しい。0.5合目までで30分かかっていると、山頂までには10時間かかる計算になるが、そんな事はない。0合目は馬返しでなく、少し上の昔の登山口を基点にしているようだ。 ここから、新道と旧道に分かれている。少し迷って旧道を取る。 後でわかったことだが、新道と旧道は、1合目で合流し、2.5合目再度分岐、その後は別コースになり、7合目で合流。その上は火口まで一本道だ。要所で連絡道があり、どちらにも行き来できるようになっている。 二道の距離は離れていないが、様相は全く違う。3合目より上で、旧道は露岩帯、新道は樹林帯を歩くことになる。通常、ピストンだと同じ道の往復になり、帰りがつまらないが、この違いは嬉しい。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
足元にウメバチソウが目立つ。 三合目から露岩帯に入るが、いつの間にやら、再び樹林帯に戻ってしまった。どうやら途中で道を間違えて、新道に入ってしまったようだ。まあ、たいした問題でない。帰りに旧道を歩けばよい。 新五合目で少し長い休憩。自衛隊員も、ここで休憩を取っている。迷彩服を着ており、簡単に景色に溶け込む。左の写真でも、奥の人は少し見難いのでは? 25L程度のザック。これも迷彩が入っていた。靴は黒い革の長靴。ピッカピカに磨いてあるが、登山には向いていなさそうだ。小銃は持ってなかった。この辺りは昔の兵隊さんと違うようだ。 隊員に「飴いりますか?」と声を掛けられた。一人に上げれば他のハイカーにもあげなくてはいけなくなるだろう。「せっかくですが」とお断りした。 自分たちが休憩を終えて先に登りだすと、「通路確保」「やぶに入れ」と号令があり、一斉に狭い山道を端によけてくれた。この辺りの規律は好感。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
木々が低くなってきた。その木が少し色づいている。その向こうに、旧道を登る人も見える。 七合目からは、旧道と合流。道は急に緩やかになる。 樹木は低く森林限界近い山道になる。ただ、平らなところになったため急に風が強くなる。気温も高くないので、非常に寒く感じる。 |
こういう時のためだ。雨具を防寒具の代わりに身に着ける。 直ぐに八合目の避難小屋が見えてきた。避難小屋というには大きく。3階建て、トイレも綺麗だし。水場もある。 ここまで天気はあまり良くなかったが、徐々に回復に向かっている。青空が見えてきた。正確には雲を突き抜けて、上に来てしまったようだ。下界は雲で見えない。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
八合目から九合目の避難小屋までも直ぐだった。 ここから、10分か20分で外輪山に取り付く。火口を囲んで、一周出来るが、反時計回りに行く事にする。山頂には遠回りになる分、時計回りに比べて、こちらがマイナーなようだが、後で考えると正解だった。 |
外輪山に立つと、内側には草木は生えていない。中央に小さな火口丘がある。火口の直径は富士山と同じくらいか?何もない山肌を歩く感じは富士山のお鉢巡りによく似ている。今日は雲海で下界は半分くらいしか見えない。これも富士に似ているとトコロ。ただ富士の方が遥かに急峻な地形。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ところどころに石仏がある。 |
山頂は外輪山の一角にある。反時計回りに240度くらい回って山頂に着く。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
山頂は単純に外輪山の一番高いところ。ゆるやかな稜線の一部。風が非常に強く、寒い。ところが数m、内側に入ると風は全くなかった。気流の悪戯だろう。座り込んで昼食。 |
中央の火口丘の頂上に突起があった。後ろのオバサンがオッパイ山と呼んでいた。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
一時間ほどで帰途に着く。残りの120度を下っていく。 |
振り返ると山頂が見える。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
外輪山の外側は日本アルプスのような風景だった。ちょっぴり色づいた草紅葉の稜線。その向こうに秋田駒ケ岳が見える。 |
峰から離れ、下りにつくと富士山の砂走りのような細かい溶岩粒になった。ここを登るのはきっとしんどいに違いない。時計回りに行くとここを登る事になる。 不動平から七合目までは、行き来た道を戻る。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||
七合目からは旧道をとる。滑り易い砂利坂道がどこまでも続く。眼下に盛岡の田園風景。田園の向こうには、早池峰山が見える。 いい加減に膝がおかしくなりそうと思った頃、樹林帯に再突入。馬返しに帰ったのは15:40だった。 今日の泊まりは八幡平ロイヤルホテル。レンタカーで移動。 |
樹林帯、アルプスのような森林限界の道、富士のようなお鉢巡り、砂走り、眼下に田園を見下ろす露岩帯の下り。今回のコースは、変化に富んだ最高の山旅だ。 岩手山どうもありがとう。 ただ、標高差1400mの上り下りは流石にきつかった。太ももに筋肉痛がやってきたのは2日後。4日後まで続いた。 |