1977m 登山日:2006年10月9日
「魔の山もこれだけ混んでいれば遭難しようがない」
行程
「パンの耳」から見たオキの耳。 正面の岩場が「天狗の留まり場」 天神平駅のロープウェイは長蛇の行列待ち バックの双耳峰は美しいのだが |
前日の10月8日に登山の予定で、10月7日に谷川温泉にあるレインボーに泊まった。ここは登山ガイドの亘理氏の経営するペンション。みなみらんぼうさんも愛用していると言う。平地でちょっとおしゃれな山小屋というような雰囲気が味わえる宿である。主人の山のウンチクを聞いて早めに布団に潜り込む。 ところが、翌日10月8日は台風を2つも吸収して発達した超大型の低気圧が東北地方の東方海上を通過していた。真冬のように東日本をタテに何本も等圧線ができる天気図になっていた。北信越、上越国境沿いは大荒れの天気。このため谷川岳ロープウェイは運行中止。もし、ロープウェイが動いていて登山を強行していたら、遭難を覚悟しなくてはいけなかっただろう。 1日、周辺観光で時間をつぶし、10月9日に再度の挑戦になった。 翌朝、雨は止んだものの曇天。ロープウェイで天神平まで上がっても、谷川岳山頂付近は雲がかかりよく見えない。天気予報で言っていた、「急激に回復する」を信じて、山頂を目指す。 熊穴沢避難小屋までは木道で天神尾根をトラバースする道。上り下りは少ないが、ぬかるんで歩きにくい。「なまけものハイカー」カミさんは滑りやすい木道が苦手で「こんなところに木道なんか作らなくてもいいのに」とぶつぶつ言いながら歩いていく。 熊穴沢避難小屋から少し行くと急登になる。鎖場もあるが、それほど危険とは思えない。しかし、ハイカーの歩みが遅くなり、人が蟻のように連なった状態になった。山頂は相変わらず見えない。雲の中に人が消えていくように見える。 蟻のように連なって登るハイカーが雲の中に消えていく 天狗の留まり場は、直径5mほどの岩で、上まで簡単に登れる。ちょうど良い休憩場所だ。山頂は見えないが、下方は見通せる。ここまで来た道と水上の町がきれいに見えた。軽くエネルギーを補給し、人のお尻をみながら登る山道に戻る。この先は熊笹の生い茂る中を進む。木はない。熊笹の間をちょうど10mおきくらいに沢筋が入っており、ちょっと見ると茶畑のように見える。 茶畑のように見える熊笹の原 天狗の留まり場から、40分ほどで肩の小屋に着く。避難小屋と言うので数人程度が泊まれる無人の小屋を想像していたが、有人で2-30人が泊まれる規模。もちろんトイレもあるが、大変混んでいて用を足すのに15分ほどかかる。山頂までもう直ぐと、一気にトマの耳を目指した。しかし、トマの耳も大混雑。やむなくそのままオキの耳まで向かった。トマの耳とオキの耳は20分もかからない距離であるが、今日はお互いを見ることができない。一瞬雲が晴れて見えると、ハイカーの歓声が上がる。 もちろんオキの耳も人でいっぱいだった。トマの耳もオキの耳もそれほど広い山頂ではない。そのまま、やり過ごし、ちょっと先のピークまで歩を進めてようやく座れるスペースを見つけた。昼食にありつく。ここを密かに「パンの耳」と言うことにする。時々、霧が晴れてオキの耳が見える。よく見ると耳の東側は断崖絶壁。霧のおかげで怖さを感じないが、晴天ならどんな恐怖を感じることだろう。「魔の山」谷川岳の片鱗は霧の中に隠れていた。 昼食後、オキの耳、トマの耳を経て肩の小屋まで戻る。天気は急速に回復している。未だ山頂は雲の中にあるが、高度60mほど下がったここでは青空が広がっていた。 谷川岳北側の山を見ることはできないが、南側180度だけでも十分感動に値する眺めである。至仏山、武尊山、皇海山、赤城山塊...。日光白根山は武尊山の直ぐに左側に見えるが雪を被っている。浅間山から横に煙のような雲がたなびいている。驚いたのは富士山が見えていること。200kmくらいの距離。 砲台のような吾妻耶山の右上のところだ。周りの色より若干黒い小さな三角にしか見えないが、確かに富士山だった。「なまけものハイカー」が見た最も遠い富士山だ。その方向を思いっきりズームして写真に納めたが、はたして、解像度の取れないHomePageの画像で見ることができるだろうか? 日本アルプスのような所を中学の頃、飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈のように「山脈」と習った。そこでは山の連なりがあり、そのピークを山と呼んでいた。ここでは山々の間を利根川が深い谷を作り、それぞれの山が独立している。中学の頃ここを関東「山地」と習った。「山脈」と「山地」、2つの違いを始めて実感した。 今、山頂に戻れば、山頂に着くまでに天気が回復しているだろう。ちょっと迷ったが、そのまま降りる。 帰りの道も渋滞の連続だった。ようやく谷川岳ロープウェイの天神平駅まで戻って驚いた。ロープウェイに乗るのに行列ができている。約1時間の行列待ち。麓に降りたときには、暗くなりかけていた。 |
天狗の留まり場から(東側) 天狗の留まり場から(西側) 左の砲台のような吾妻耶山のすぐ右上に富士山が見えた |
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