2356m 百名山 2228m 百名山 登山日:2008年8月12日〜14日
「二泊三日で2つの百名山を楽しむコースになるが、主役はやはり尾瀬ヶ原/尾瀬沼」
深田久弥の「日本百名山」の至仏山の章の冒頭は「尾瀬沼を引き立てるのが燧岳とすれば、尾瀬ヶ原のそれは至仏山であろう。」と始まる。百名山の名峰二座は2つの尾瀬の引き立て役だと言っているのである。確かに広大な尾瀬ヶ原を挟んで対峙する両座は主役の尾瀬を飾るアクセサリーのように見えた。今回、初めて尾瀬を訪ねて見ての印象である。 尾瀬は群馬、新潟、福島の3県にまたがり、その北端に位置する燧ケ岳は東北地方福島県に位置する。そして東北、北海道の最高峰になる。「北日本の最高峰」、こう書くと、周囲の山を圧する高峰のイメージを受けるが、実はその十数km南にある日光白根の方が200m以上高い。物は言い方である。 尾瀬はほとんどの地域が東京電力の所有になっている。大正年間から70余年に渡って、尾瀬一帯に大規模なダム群を作り、発電と水利用する計画があった時の名残だ。その東京電力が今は尾瀬の自然保護を先頭に立って勧める立場になっているのは世の皮肉としか思えない。 |
尾瀬沼の畔から見た燧ヶ岳 |
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行程
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自宅を7:30に出発。渋滞を避けるために少々遠いが圏央道あきる野ICまで一般道を走り、圏央道/関越自動車道を経て沼田ICで下りる。ここから120号線、401号線を経て大清水へ向かう。この沿線は多数の観光地、スキー場があり、観光客を狙った野菜の直売所が多数ある。東京の半分の価格のキュウリを購入。山ではどうしても野菜不足になる。キュウリは山の昼食の貴重な野菜だ。 さらに昼食を摂って大清水に着いたのは13:00近くだった。 尾瀬の主な入口の一つであるここは賑やかで混雑を予想していたが、意外に閑散としており、売店のおばさんも手持ち無沙汰だった。でも駐車スペースは充分にあり問題はない。 |
身支度を整えて出発。しばらくは林道歩きになる。そろそろ林道歩きも飽きたかなと思った頃、一ノ瀬休憩所に到着。 ここから本格的な登山道。と言ってもさすがは尾瀬。「片側一車線」の木道がベタベタに這わせてあり、ちょっと他の山の登山道とは趣が違う。 軽い登りがずうっと続き、三平峠に着く。ここの標高は1760m。大清水が約1200mなので標高差600m近くになる。でも、林道/木道ばかりを歩く楽な山道だったせいか、そんなに登った気分にはならない。 15分ほど下って、今日の泊まりの尾瀬沼山荘に着く。山荘の手前に、人の出入りを自動的にカウントするゲートがあった。ここからが尾瀬と言うことか? |
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尾瀬沼山荘は尾瀬の数ある山荘の中では小さい方だ。東京電力の子会社、尾瀬林業の経営だ。部屋は個室、綺麗に掃除されている。風呂もある。夕食はプレートだがいろいろとおかずが乗っていた。トイレも水洗。他の山では考えられない豪華な山泊まりができた。 二日目は朝食後6:20に出発。しばらくは左に尾瀬沼とその向こうの燧ケ岳を眺めながらの木道歩き。 |
木道の脇には、いろいろな花が咲いている。ミズギク、コバギボウシ、サワギキョウ、マルバダケブキ。アザミは、オゼヌマアザミか? こんなに多くの花を見ることはめったにない。流石は尾瀬だ。 30分ほどで、長蔵小屋に着く。この小屋は山荘とは思えないほど大きい。木造の2階建ての長い建物は昔の小学校を思わせる。上の写真は長蔵小屋を過ぎ、大江湿原から見た燧ケ岳。 |
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長蔵小屋から20分ほどで、長英新道に入る。突然木道がなくなり、普通の山道になる。尾瀬沼山荘で「雨の後はぬかるみがひどく歩きにくい」と脅されていたが、今日はたいしたことはない。緩やかな登りが延々と続く。登るにつれて少しづつ勾配が増していく。と、木の間から麓の尾瀬沼が見えるようになる。そしてその向こうに日光白根が霞んでいる。 やがて森林限界を超え、目指す頂が目の前に見えてきたところが一つ目のピーク、ミノブチ岳。 |
東には尾瀬ヶ原と至仏山が霞んで見える。30分ほどで2つ目のピーク、俎ー(まないたぐら)に着く。 燧ケ岳は火山。火口を中心に5つのピークがある。このうちの俎ー(まないたぐら)に二等三角点がある。ここが山頂と言うことか? |
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俎ー(まないたぐら)はあまり広くはないが結構混み合っている。展望は360度だが、今日は遠くの山は見えない。北西に会津駒ケ岳。北東には平ヶ岳が見える筈だが、今日はNG。南の日光白根ももう見えなくなってしまった。南東には尾瀬ヶ原を挟んで至仏山が、うっすらと見える。 ゆっくりと眺めを楽しみながら、昼食のインスタントラーメンを食べた後、3つ目のピーク、柴安ー(しばやすぐら)に向かう。 |
柴安ー(しばやすぐら)は俎ーより10mほど高い。つまり東北以北の最高点はここと言うこと。でも俎ーほど混み合っていない。全ての山道は俎ーに集まるように取り付けられている。最高点の柴安ーは一通過点に過ぎない。 |
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ここからは一気の下りだった。最初は急坂、石がごろごろで歩きにくい。徐々に勾配がゆるくなる。急に木道になったと思ったら尾瀬沼からの道との合流点だった。尾瀬に戻ってきたと感じた。 合流点から10分ほどで見晴に着く。見晴には大きな山小屋がいくつもある。ここから先は広大な尾瀬ヶ原が広がっている。ここまでくれば今日の泊まりの竜宮小屋は直ぐだ。 長い山行きの疲れを癒すため、カキ氷を一杯注文した。これが失敗だった。30分後に雨が降り始め、夕立となった。1時間半待っても雨が止む気配はない。少し小降りになったタイミングを見計らって30分先の竜宮小屋に向かう。 |
竜宮小屋は前泊の尾瀬沼山荘と違い個人経営。アットホームな雰囲気がある。 施設には風呂、乾燥室、水洗トイレもあった。尾瀬の山小屋では風呂は標準装備のようだ。夕食は1プレートだが、いろいろなおかずが乗っている。 部屋は予約時男女別部屋と聞いていたが、個室をもらえた。尾瀬にとって盆休みはローシーズンのようだ。この辺りの感覚も他の山の小屋と違う。ハイシーズンはニッコウキスゲ/水芭蕉の時期。この時期だと一人一畳の相部屋になるらしい。 夕食後、一人の人と会話を交わす。月に一度の割りで尾瀬に来ており、小屋のマスターとも馴染み。尾瀬では竜宮小屋が一番との事。HomePageを紹介してもらった。尾瀬の写真が多数あり、素晴らしいページだ。一見の価値はある。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~h987/ 今度あったら、写真の撮り方のテクニックを教わりたい。 |
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3日目は、霧の中、5時過ぎに出発。2本並んだ木道が霧の中に消えていく風景は幻想的だ。小屋から数百mの範囲では数人のカメラマンがシャッターチャンスを狙っていたが、少し行くと孤独な二人旅になった。時折、逆方向から来たハイカーが霧の中から現れ数分で再び霧の中に消えていった。 |
木道の脇に、コバギボウシ、ミズギク、サワギキョウが咲く。 尾瀬にとっては初秋、一面のお花畑とはいかないが、静かな花見を楽しめる。 |
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1時間もすると、霧が徐々に晴れ、正面に目指す至仏山が見えてきた。完全に霧が晴れるまでここで見ていたいが、時間もない。出発から1時間20分ほどで山の鼻に到着。 山の鼻から5分ほどで本格的な山登りとなる。尾瀬らしくベタベタの木の階段が延々続く。山道を川のように水が落ちてくる。登山靴でなくては辛いだろう。 |
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登り出すと1時間弱で森林限界に入った。この山は蛇紋岩で構成されており、周辺の山に比べて植物が育ちにくい。そのため森林限界も早く訪れるらしい。背中には尾瀬ヶ原と燧ケ岳が見える。 |
植生も変わってきた。オオバギボウシ、タカネナデシコ、ウメバチソウ、ハクサンシャジン...。普通に見られる高山植物が増えてきた。 山の鼻から4時間で山頂に到着。 |
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山頂は広く360度の展望が望める。残念な事に、今日は天気が悪くイマイチ。近くの山は見えるが、ポイントポイントが欠けている。日光白根は雲が掛かっていた。見下ろすと今日のゴール、鳩待峠の建物が見える。 燧ケ岳と麓の尾瀬ヶ原は薄っすら。越後の山も見えるはずだが、近くの平ヶ岳も見えない。南西側にこれから下りていく稜線、その向こうに武尊山は見られた。 天気が悪い。そそくさと少し早い昼食をすませ、稜線伝いに小至仏山に向かう。 |
小至仏山から少し下り、笠ヶ岳との分岐、この辺りからまた木道が始まった。下りるに従って天気が良くなる。こんな事ならもっと山の上に居れば良かった。 14:00に鳩待峠に到着。尾瀬林業の山荘に泊まると、鳩待峠-大清水間の無料直通バスを予約できる。このバスを利用して大清水に戻った。同じバスの利用者は5人。便利なシステムと思うが、まだあまり知られていないのかもしれない。 大清水から今日の泊まり、丸沼高原のシャーレ丸沼に向かう。明日は、日光白根山だ。 |