行程
はるか十勝連峰を望む エゾノツガザクラと雪融けを待つすり鉢池 旭岳全体 |
7月2日に利尻富士に登り、7月3日に旭川駅前に泊まり、7月4日に旭岳温泉からロープウエイですがたみ駅まで上り、北海道の最高峰、旭岳に向かう。 すがたみ駅から姿見池まで20分ほどはお花畑の間を縫う遊歩道。 姿見池は中央に雪が残り、周辺だけ水面が見える。水は黒く、姿を見ることはできない。姿見池を過ぎると、本格的な登山道になる。左の地獄谷から上るガスのせいであろう、それまでの美しいお花畑がうそのように、草木がなくなり、荒涼としたガレ場の登りが続く。ところどころに何合目という標識があり、それ以外の目印らしい目印はない。標識ごとに5分/10分と細かい休憩を取りながら、山頂へ向かう。 姿見池。雪が解けておらず、水面は真っ黒 登り始めた時は、天気が良く、十勝連峰を望む事ができたが、いつの間にか、霧が立ち込めてきた。 霧の中、2時間ほどで山頂に辿り着く。山頂は広い。西側は、深い谷になっていて、ロープで立ち入り禁止区域になっている。天気ならば、きっと素晴らしい景色を見ることができるのだろうが、生憎、今日は霧の中。 周囲はキバナシャクナゲが咲いている。本州では人の背丈ほどにもなる立派な木だが、ここでは高さがせいぜい30cmほど。草かと思うほどの背丈しかない。 旭岳山頂付近の様子 30分ほど休憩を入れて、行き来た道を下る。下りの道を辿りながら、旭岳の南で20年ほど前に不思議な遭難事件が起きた事を思い出した。 旭岳から下ってきたと思われる登山者が道に迷い、湿原地帯に入り、身動きが取れなくなった。遭難者は、救助を求めるため、木で縦5m横15mほどの「SOS」の文字を作った。救難隊に自分を見つけてもらうためだ。しかし、努力もむなしく、発見されたのは、遭難後5年も経ってだった。遭難者は白骨化していて、獣に食べられた跡もあった。死後食べられたのか、食べられて死んだのかまでは不明だった。 現場を見て思った。ここは森林限界を超えた見通しの利く場所。季節は夏。道を間違えたことに気がつけば、容易に引き返せそう。下った道は歩行が困難な場所でもなさそう。湿原まで降りても、夏なので「SOS」を書く体力があるのなら、尾根まで上がることは難しくなさそう。 疑問は、救難側にもある。見通しの利く場所なので、「SOS」の字があれば容易に見つけることができそうな気がする。5年も見つからなからなかったのは何故か。 何らかの普通では考えられない状況が遭難者を襲ったのか?それとも判断ミスが重なって最悪の事態に至ったか?「SOS」は5m*15mでは小さすぎるのか? 経過を追いながら見ていくと、ドキュメンタリーがそのままミステリーになりそうな事件である。詳しくは、http://www.chanbara.jp/sos/に、比較的詳しい記載をしている。参照されたし。 そんな事を考えながら単調な下りを姿見池まで下りる。姿見池からはゆっくりとお花畑の周回遊歩道を歩く。メアカンキンバイ、エゾノツガザクラ、チングルマ、イワヒゲ、エゾコザクラ、ショウジョウバカマ...。もちろん、旭岳山頂で見たキバナシャクナゲもある。ショウジョウバカマは本州なら4-5月でも見ることができる。夏に見たことはない。エゾノツガザクラは7-8月の花。北海道の高山では、春と夏が一度に訪れているようだ。 ゆっくりとお花畑を楽しんだ後、ロープウエイを下界に下る。今日の宿は、ロープウエイのあさひだけ駅から歩いて10分ほどの湧駒荘。ここはお勧めである。昨今の温泉は、きれいにはなったが、カルキ臭く、これが温泉かと思うようなところが多い。ここは、もちろん掛け流し、湯船から無造作にお湯が溢れている。食べ物も悪くない。一つ一つのメニューに工夫がある。今回、7泊8日の北海道旅行になったが、その中では一番の宿だった。 |