旭岳タイトル  2290m  百名山 登山日:2006年7月4日

大雪山は山というには大きすぎる山塊である。ところが、一般の人はこの山塊をひとつの山として捉えている場合が多い。同じような存在に、八ヶ岳がある。一般の人は八ヶ岳は知っているがそれが山の集合体で最高峰が赤岳という山であることは知らない。深田久弥氏の日本百名山でも八ヶ岳/大雪山のように山の集合体を名山の一つとして挙げている。旭岳は大雪山の西の端にあるが、大雪山塊の最高峰である。ロープウエイの力を借りて端っこの旭岳に登って大雪山に登ったと言うのはちょっと恥ずかしいが、「なまけものハイカー」だからしょうがない。ということで許してほしい。

旭川方面から見た大雪山
旭川方面から見た大雪山
エゾノツガザクライワヒゲ チングルマ
エゾノツガザクラとすり鉢池 メアカンキンバイ 十勝連峰を望む 旭岳頂上付近キバナシャクナゲ
エゾコザクラ 姿見池
旭岳を望む
行程
すがたみ駅 9:45
姿見池 10:05
七合目着 11:00
七合目発 11:05
八合目着 11:25
八合目発 11:55
旭岳山頂着 12:30
旭岳山頂発 13:05
八合目着 13:40
八合目発 13:45
七合目 14:00
姿見池 14:50
すがたみ駅 15:30

難易度 ★★★
行程時間(含む休憩) 5時間45分
駐車スペース あさひだけ駅前(有料の駐車場と無料の駐車場があり)
トイレ すがたみ駅
登山口 わかり易い
水場 なし
帰りの温泉 旭岳温泉
お勧め度 ★★★★


はるか十勝連峰を望む
はるか十勝連峰を望む

エゾノツガザクラとすり鉢池
エゾノツガザクラと雪融けを待つすり鉢池

旭岳
旭岳全体
7月2日に利尻富士に登り、7月3日に旭川駅前に泊まり、7月4日に旭岳温泉からロープウエイですがたみ駅まで上り、北海道の最高峰、旭岳に向かう。
すがたみ駅から姿見池まで20分ほどはお花畑の間を縫う遊歩道。

姿見池は中央に雪が残り、周辺だけ水面が見える。水は黒く、姿を見ることはできない。姿見池を過ぎると、本格的な登山道になる。左の地獄谷から上るガスのせいであろう、それまでの美しいお花畑がうそのように、草木がなくなり、荒涼としたガレ場の登りが続く。ところどころに何合目という標識があり、それ以外の目印らしい目印はない。標識ごとに5分/10分と細かい休憩を取りながら、山頂へ向かう。

    姿見池
        姿見池。雪が解けておらず、水面は真っ黒

登り始めた時は、天気が良く、十勝連峰を望む事ができたが、いつの間にか、霧が立ち込めてきた。
霧の中、2時間ほどで山頂に辿り着く。山頂は広い。西側は、深い谷になっていて、ロープで立ち入り禁止区域になっている。天気ならば、きっと素晴らしい景色を見ることができるのだろうが、生憎、今日は霧の中。
周囲はキバナシャクナゲが咲いている。本州では人の背丈ほどにもなる立派な木だが、ここでは高さがせいぜい30cmほど。草かと思うほどの背丈しかない。

    旭岳頂上
             旭岳山頂付近の様子

30分ほど休憩を入れて、行き来た道を下る。下りの道を辿りながら、旭岳の南で20年ほど前に不思議な遭難事件が起きた事を思い出した。
旭岳から下ってきたと思われる登山者が道に迷い、湿原地帯に入り、身動きが取れなくなった。遭難者は、救助を求めるため、木で縦5m横15mほどの「SOS」の文字を作った。救難隊に自分を見つけてもらうためだ。しかし、努力もむなしく、発見されたのは、遭難後5年も経ってだった。遭難者は白骨化していて、獣に食べられた跡もあった。死後食べられたのか、食べられて死んだのかまでは不明だった。
現場を見て思った。ここは森林限界を超えた見通しの利く場所。季節は夏。道を間違えたことに気がつけば、容易に引き返せそう。下った道は歩行が困難な場所でもなさそう。湿原まで降りても、夏なので「SOS」を書く体力があるのなら、尾根まで上がることは難しくなさそう。
疑問は、救難側にもある。見通しの利く場所なので、「SOS」の字があれば容易に見つけることができそうな気がする。5年も見つからなからなかったのは何故か。
何らかの普通では考えられない状況が遭難者を襲ったのか?それとも判断ミスが重なって最悪の事態に至ったか?「SOS」は5m*15mでは小さすぎるのか?
経過を追いながら見ていくと、ドキュメンタリーがそのままミステリーになりそうな事件である。詳しくは、http://www.chanbara.jp/sos/に、比較的詳しい記載をしている。参照されたし。

そんな事を考えながら単調な下りを姿見池まで下りる。姿見池からはゆっくりとお花畑の周回遊歩道を歩く。メアカンキンバイエゾノツガザクラチングルマイワヒゲエゾコザクラ、ショウジョウバカマ...。もちろん、旭岳山頂で見たキバナシャクナゲもある。ショウジョウバカマは本州なら4-5月でも見ることができる。夏に見たことはない。エゾノツガザクラは7-8月の花。北海道の高山では、春と夏が一度に訪れているようだ。
ゆっくりとお花畑を楽しんだ後、ロープウエイを下界に下る。今日の宿は、ロープウエイのあさひだけ駅から歩いて10分ほどの湧駒荘。ここはお勧めである。昨今の温泉は、きれいにはなったが、カルキ臭く、これが温泉かと思うようなところが多い。ここは、もちろん掛け流し、湯船から無造作にお湯が溢れている。食べ物も悪くない。一つ一つのメニューに工夫がある。今回、7泊8日の北海道旅行になったが、その中では一番の宿だった。